短編集【d】【npl】 (ページ1)

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ヒロインになりたかった/kn ページ1

私は友人であるコネシマが好きだ。

女の中では1番仲がいいとさえ思っている。

いや、思っていた。

駅の改札を、可愛らしい子と2人で楽しげに抜けていくのを見てしまった。

美男美女が歩く姿はまるで童話の王子と姫のように、光り輝いていた。

くしゃり、自分の顔が歪むのを感じた。

…ああ、2人が王子と姫なら、こんな醜い顔をしている私は、まるで世にも恐ろしい魔女じゃないか。

｢…っおーい！A！｣

よく通る彼の声が聞こえた気がして、そちらを向けば、コネシマが私に気付いたようで、私に向かって笑顔で手を振っていた。

お姫様のような子も小さく、控えめに手を振っていた。

やめてよ、他の女の子とそんな、仲良さそうな所を見たくなんてないのに。

悪気のない王子様は、あまりにも、悪すぎる。

私は夢中でアスファルトを蹴り、改札を離れて駅前の隅で座り込む。

人目なんて気にしないで、ぼたぼたと涙を零し、嗚咽を漏らした。

気持ち悪く喚き散らし、少し冷静に戻った頭で帰路に着く。

｢…君に、選ばれたかった｣

あのお姫様の位置が、私だったら良かったのに。

私は、お姫様にはなれなかった。
なら、魔女として…