短編集【d】【npl】 (ページ29)

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食べてしまったものを吐き出そうと手を口に持っていくが、彼に腕を掴まれてそれは叶わなかった。

｢吐いちゃダメやん。せっかくのおまじないなんやから…｣

…あと2つも残ってるよ？

オスマンは2つ目のチョコを手に取ると、自分の口に含んだ。

｢…え、何して、んんっ！｣

｢…ふ、はぁ…｣

いきなり口付けてきた彼に抵抗は出来ず、彼の口の中のチョコが私の口に入ってきた。

彼の舌も入ってきて、こんな状況じゃなければ蕩けそうな甘い雰囲気なのに。

｢っや、ん…っは…｣

息が出来なくて苦しくて、

最終的に、彼には勝てず、溶けたチョコを飲み込んでしまった。

｢…よし、食べたな。最後…はい｣

｢…｣

食べたくない。そんな意を込めて首を横に振ると、

｢ヤなん？…しゃーないな…｣

そう言ってまた一粒自分の口に入れようとしたオスマンを引き止める。

｢た、食べる！、から…｣

またあんな苦しい思いをするならまだ、自分から食べた方がマシだ。

｢じゃあ、はい｣

アーン、と差し出された手に摘ままれたそれを口に入れる。

瞬間、口の中でそれが拒絶された。

今すぐ吐き出したい衝動にかられる。

｢だから、吐いちゃアカンて｣

｢っんー！｣

オスマンの手が私の口を塞ぐ。

口の中でチョコが溶け、舌に絡み、生臭さが更に広がる。
もう飲み込むしかなかった。

｢よしよし、ちゃんと食べたな｣

暗く光るオスマンの目を見て、私はもう彼から逃げられないと感じた。

君に捧げる、秘密のおまじない

もう絶対、離さないから。