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それから俺は、課題の調査を口実に休み時間、帰路に休日も、定期的にAに会って話すようにした。
Aの視界に、記憶に、心中に、俺が極力いるように、一緒に居続けた。
｢だからこれは、この方がよくない？｣
｢うーん、そっちもいいけど、こっちの資料が見やすくていいですよ｣
俺の意見を言う前に、否定をせずに話を聞いてあげて、
｢Aさん、めっちゃ字綺麗で読みやすいですね｣
｢あ…ありがとう…｣
細かいことや気を使ってそうな所を褒めてあげて、
｢…は？レパロウくんに関係ないよね｣
｢ごめん、でも、Aさんのことが大切だから、つい気になって…｣
嫉妬っぽいところを見せて、怒られたらまず先に謝って…。
そんな行動を繰り返していれば、少しずつ2人の距離は近付いていった。
人間なんて簡単なもので。
相手に都合よく動いて好意を示せば、悪い気は持たないし、なんなら向こうから好意を持ってくれる。
Aも段々と、段々と、俺に否定的な対応をしなくなっていった。
｢あ、これよくないですか？｣
｢…うん、いいと思う｣
好意さえ持てば、
多少違うことを思ってたとしても、
俺が黒と言えば自分の中の白を黒にする。
黒だと思い込むようになる。
いつしかAは俺のことを優先的に考えるようになった。
｢でさ、Aさんはどっちがいい？｣
｢…こっち、レパロウくん、すきそうじゃない？｣
｢…Aさん、俺の事分かってない｣
ちょっと拗ねたような態度を取れば、慌てて俺の裾を握りながら謝罪をされる。
｢っご、ごめん、ね？｣
上目遣いで不安そうに俺を伺うAを見て、ああ、成功したな、なんて最低なことを思った。
透明は冷めた孔雀色
｢じゃあ明日は、ここに行きましょうか｣
｢…うん…｣
｢Aさんはあの上着、着てきてくださいね｣
｢わかったよ。レパロウくんが、選んでくれたやつだね｣
｢そう。ふふ、えらいえらい｣
俺が褒めれば、喜びに埋もれながらドロリと濁った瞳で笑うA。
そんなAは今までで1番可愛くて、1番愛おしかった。
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作者名：ビリヤニ | 作成日時：2024年1月18日 19時
