短編集【d】【npl】 (ページ48)

今日:84 hit、昨日:37 hit、合計:3,946 hit

傷だらけの花嫁/8 ページ48

真っ白なウエディングドレスを着て皆の中心で笑うA。

眩いばかりに輝くA。

でも、その内側が傷だらけなのを、俺は知っている。

｢はっち、来てくれてありがとう｣

沢山引いた赤い線を、オペラグローブで隠している腕。

そんな傷だらけの手で俺の手を握り、Aは微笑む。

｢おめでとう、A｣

俺がそう言えば、なんだか擽ったそうに目を細める。

その笑顔が続いてほしい。

幸せでいてほしい。

どれだけ俺が祈っても、

そいつと一緒だと、不幸はきっと、訪れるよ。

だって、彼は

Aの行動を否定して
Aの思考を否定して
Aの性格を否定して

それでも好きだからと、Aは自分を抑えていったよね。

彼の言葉に泣きながら、死んでしまいたいなんて言っていた日も覚えている。

ボロボロの手を治療した日も覚えている。

きっと、またそんな日も来ると思う。

でも、ごめんね。

それでもどうか
ただの俺のエゴだけど
Aには生き続けてほしい。

たとえ不幸のままだとしても、生き続けて。

傷だらけの花嫁

結婚式の日に配られた小さな花達。
花瓶に入れて飾っていたけど、しおれてきてしまった。
悲しげに俯く花達をこのまま枯らしたくないから
ドライフラワーにするよ。
いつか、これを君に捧げられますように。