無情に咲く過剰投与/kn※ ページ7
だるく、痛む体を感じながら目を開ける。
硬い床の感触。
ああ、昨日、疲れて床で寝ちゃったのかななんて思い、体を起こせば、そこは見知らぬ部屋。
｢なに、これ…｣
まるでケージのような簡易的な檻。
首輪とそれに繋がったチェーン。
申し訳程度の床に敷かれた柔らかい毛布。
焦りから、はっ、はっと息が詰まるように、荒くなるのを感じる。
｢ん？何や、起きとんか｣
ガチャリと扉を開け入ってきたのは、眩しいほどの金髪を持つ男性。
この男には見覚えがある。
｢こね、しまさん｣
私の働いている会社の部長だ。
別の部署だから、関わることはなかったが、名前と顔くらいは知っている。
｢コネシマさん！？なんなんですかこれ、！助けてください！｣
檻の向こうにいるコネシマさんに向けて、大きな声で叫ぶと、首元からバチン、という音と共に痛みが走った。
その衝撃に驚き、思わず床に這い蹲る。
｢あーあー、大きい声出しちゃあかんやろ…ま、家に慣れるまではしゃーないか｣
檻の隙間から伸ばされた腕から逃げるように、後ろに下がる。
が、すぐに壁にぶつかってしまった。
コネシマさんは檻の中には入ろうとはしない。
｢今日からココがお前の家やからな。慣れるまではこのままやけど、我慢してな｣
飯、これやからと檻の入口付近に、餌皿に入れられた水とご飯が置かれた。
這って食えとでも言うのか。
拉致された状態で食えるとでも思っているのか。
精一杯睨みつけるが、コネシマさんは優しいような濁った瞳で微笑んだ後、扉から出ていった。
毛布をかぶり、隅で隠れるように膝を抱えて1時間ほどすると、コネシマさんが再度部屋を尋ねてきた。
｢飯、食ってへんのか｣
｢食べるわけないでしょ｣
｢食っても平気やで、ほら｣
餌皿の中のご飯を自分で軽く手でつまみ、私に見せつけるように食べる。
そんな様子を毛布の隙間から覗く私を横目で見て、檻のそばにある椅子に腰かけ本を読み始めたコネシマさん。
｢なんで、こんなこと…｣
｢俺、ペット欲しかってんな…可愛い犬が｣
｢い、ぬ？｣
｢俺もお前をいい子にできるように躾頑張るから、お前も慣れるように頑張ろうな｣
難しそうな本から一切目をそらさずに、独り言のように呟く彼に、絶望感を覚えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 21人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ビリヤニ | 作成日時：2024年1月18日 19時
