箱にしまって、開けないで/kn ページ9
在宅ワークが流行りだしたこの頃。
最近お世話になっている宅急便やさん。
ワンクリックで済むし、生鮮品は午前中に注文すれば夕方には届く…便利なものだ。
ピンポンと、チャイムの音が部屋に鳴り響く。
ドアホンの画面を見れば、宅配員の制服をした男が立っている。
返事をすると、想像通りの宅配会社の名前を言われる。
ドアを開けると、いつものおじさんではなく、若い男性がそこに立っていた。
眩しいばかりの金髪に負けないくらいの眩い笑顔で、私を見ていた。
｢お荷物お届けにあがりました！W宅急便です！ここにサインか印鑑お願いしていいっすか？｣
笑顔と共に差し出される受領書を受け取り、ドキマギとしながらサインをする。
｢…あざっす！｣
帽子を軽く上げ、目を細めて口角を上げる彼の姿に、胸が高鳴るのを感じた。
それ以降彼はこの地域の担当になったのだろう。
何か頼むと必ず彼が来た。
来る度に私をすり抜けて部屋中に響くんじゃないかというくらい元気な声にも慣れてきた頃、自分の違和感に気づいた。
彼の行動ひとつひとつが輝いて見えるようになってきたのだ。
｢…じゃあ、失礼しゃす！｣
八重歯を見せる、太陽のような笑顔も、
｢これ重いですけど…ここ置いて大丈夫すか？｣
細やかな、注意の及ぶ気遣いも、
｢寒いんで風邪ひかないように…暖かくしてくださいね？｣
｢あんたこそあったくして風邪ひかんようにな！…あ、してください、やな！｣
へへ、と頬を掻きながら子供のように無邪気に笑う姿も、
全部全部、素敵に見えて、
名前も知らない、輝く髪の彼に、恋をしたと、自覚するのはそう遅くなかった。
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作者名：ビリヤニ | 作成日時：2024年1月18日 19時
