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それから私はほとんど毎日御屋敷に通った。少し彼女の顔を眺めるだけ。お嬢さんとは目が合ったり合わなかったり。でもいつ行っても彼女は二階の右端の部屋にいた。もしかして、病気か何かなのだろうか。だからこんな片田舎にずっといるのだろうか。それでも少しくらい外に出て日に当たらなければ体にはかえって毒だと思うが。自分なら、彼女を連れ出してきっと楽しませることができるのに。そんな考えたところで無駄な考えを頭に浮かばせては彼女の横顔にまた心臓を高鳴らせた。

 ある日、友人の一人が声をかけてきた。

「お前好きな人でもできたの?」
 と。図星をつかれて押し黙る私に、友人はケラケラ笑って「俺にも紹介してくれよ」などという。だが、彼とは長い付き合いの所謂幼馴染で、好きな人を横から掻っ攫うような男ではないし、いいかと、お嬢さんの話をした。
 御屋敷なんて聞いたことがない、という彼に、じゃあそこまで案内してやる、と言った。その日の放課後、いつも通り自転車で御屋敷に向かう。私が前を走り、その後を着いてこい、と。そしていつも通りの道を辿り、御屋敷の前に着いてから振り向いた。ここが件の御屋敷だ、どうだ本当にあっただろ、と。
 後ろに友人はいなかった。何処かではぐれた?そんな筈はない。だって此処は一本道。大慌てで友人を探しに御屋敷を後にすると、山道を出た途端友人の大声が聞こえてきた。

「お前どこ行ってたんだよ!?」

「お前こそ!お前いきなり俺の目の前で消えたんだよ!!」

 何が何だかわからない。目を白黒させていると友人が真剣な顔で言った。

「なんだかよくわからんことが起きてるけど、正直その御屋敷にはもう行かないほうがいいと思う。嫌な予感がする」

 友達の恋路を応援してやれずすまん、と友人は頭を下げた。その日はそのまま友人に引きずられるようにして家に帰った。
 その日から暫く、御屋敷にはいかなかった。友人のあの必死そうな顔がどうにも頭から離れなかったからだ。

 不思議と心は穏やかだった。お嬢さんと会わなかったからか、心臓が破けそうなほど脈をうつこともなかった。
 しかしその日夢を見た。お嬢さんが泣いていた。御屋敷のあの二階の右端の部屋で。どうして会いに来てくれないの、なんて呟きが聞こえた気がした。そんな夢をほとんど毎日見るようになって、結局、気づけば私はまたあの御屋敷の前にいた。

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あいすくりぃむとちょこれぃと(プロフ) - すにすな@さくらぁさん» またまたコメントありがとうです。兄がぽんこつならもちろん弟だってぽんこつです。間に合ったルートは(弟的には)ハピエンです。間に合わなかったルートも(どっちも壊れちゃったから)ハピエンです。 (4月23日 14時) (レス) id: b2ed5b6349 (このIDを非表示/違反報告)
すにすな@さくらぁ(プロフ) - またしてもコメ失礼します🙇‍♂️弟視点に命が助かりすぎました。まさかの救済ルートか!?と思ったら案の定そんなものはなく…やっぱり可哀想な男はどう足掻いても可哀想な結末しかないんだというのを再認識できてとても良かったです。 (4月23日 7時) (レス) @page25 id: 6eb52e408b (このIDを非表示/違反報告)
あいすくりぃむとちょこれぃと(プロフ) - すにすなさん» コメント感謝です〜こいつは実は弟より全然頭良いです。頭が良いせいで頑張っても無駄と気づいてしまいました。それでも他にやりようはあったのに、『逃げ出す』という一番の悪手を選んでしまうぽんこつです。作者もお気に入りなのでもしかしたら続くかもしれない。 (4月8日 23時) (レス) id: b2ed5b6349 (このIDを非表示/違反報告)
すにすな(プロフ) - お話の世界観や最後の後味の悪さに引き込まれ、一気に読んでしまいました。特に2作目のおにいちゃんのお話が大好きです。一生懸命頑張ったけど報われず、最期の瞬間は惨めであっけない男が好きなので、ゼストおにいちゃん最高でした。密かに更新楽しみにしています。 (4月8日 22時) (レス) @page21 id: b675f659fc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あいすくりぃむとちょこれぃと | 作成日時:2024年4月6日 3時

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