たったひとつがだめだったおとうと。 ページ22
・死ネタ(少年漫画程度の残酷描写)
・「なにもかもダメなおにいちゃん。」を読んでからじゃないとわからない
・おにいちゃんへの𝐵𝐼𝐺 𝐿𝑂𝑉𝐸__(恋愛ではない)
・剣と魔法系ファンタジー世界
・ルート分岐(やってみたかった)
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私には兄がいた。親はおらず、兄と弟二人きり。孤児の兄弟に世界はあまりにも残酷だった。人の目は冷たく、罵声や暴力を浴びせられることも珍しくはなかった。
兄は聡い人だったから、きっと私を見捨てていくことだってできた。むしろそうすることが、一番利になるとわかっていたはず。それでも、兄はいつだって私の手を引いてくれた。泣き虫で怖がりだった私を抱きしめて、パンを与えてくれるような人だった。自分も空腹だろうに、「お前が腹いっぱいならそれでいい」と頭を撫でるのだ。私は、そんな優しい兄が好きだった。
兄の顔の殴られたような痕から、持ってきたパンが正当に得たものではないことはわかっていた。自分のせいで、優しい兄に悪いことをさせてしまっている。幼い頃の私はそれが心苦しかった。それでも、この生活から抜け出す方法も、兄に迷惑をかけない生き方も、当時の私には思いつかなかった。ただ兄にしがみついて、ごめんなさいとありがとうを言う事しかできなかった。
そんな日常が変わり始めたのは、血管すら凍りそうな寒い日だった。暖を取れるものも、寒さを凌げる場所もあるわけがなく。お互いの体を寄せ合ってなんとか温めあおうとしたが、降り始めた雪に体温を奪われていった。
意識がぼんやりとし始めて、瞼が重くなってきた。霞む視界と働かなくなっていく頭の片隅で、(このまましぬのかな)と考えた。
(せめて、にいさんだけでも助けてください)
にいさんはとても優しい人だから、どうか幸せにしてあげてください。ぼくは悪い子だから、生きられなくてもいいです。だけどにいさんは、辛い思いをした分、いっぱいの笑顔にしてあげてください。
誰に向けてかもわからない、そんな祈りや願いを思いながら、私は目を閉じようとした。
「お前たち、こんな寒い日にどうした」
私の願いが通じたのだろうか。綺麗な身なりのおじいさんが優しい目で私達二人を見つめていた。
「行くところがないなら、この老いぼれのところへ来るかい」
とっさに、にいさんをたすけてと言おうとした。けれど、私が口を開くより前に兄が口を開いた。
「おとうとをたすけてやって」
おじいさんは頷いて、私たちを抱え上げた。
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あいすくりぃむとちょこれぃと(プロフ) - すにすな@さくらぁさん» またまたコメントありがとうです。兄がぽんこつならもちろん弟だってぽんこつです。間に合ったルートは(弟的には)ハピエンです。間に合わなかったルートも(どっちも壊れちゃったから)ハピエンです。 (4月23日 14時) (レス) id: b2ed5b6349 (このIDを非表示/違反報告)
すにすな@さくらぁ(プロフ) - またしてもコメ失礼します🙇♂️弟視点に命が助かりすぎました。まさかの救済ルートか!?と思ったら案の定そんなものはなく…やっぱり可哀想な男はどう足掻いても可哀想な結末しかないんだというのを再認識できてとても良かったです。 (4月23日 7時) (レス) @page25 id: 6eb52e408b (このIDを非表示/違反報告)
あいすくりぃむとちょこれぃと(プロフ) - すにすなさん» コメント感謝です〜こいつは実は弟より全然頭良いです。頭が良いせいで頑張っても無駄と気づいてしまいました。それでも他にやりようはあったのに、『逃げ出す』という一番の悪手を選んでしまうぽんこつです。作者もお気に入りなのでもしかしたら続くかもしれない。 (4月8日 23時) (レス) id: b2ed5b6349 (このIDを非表示/違反報告)
すにすな(プロフ) - お話の世界観や最後の後味の悪さに引き込まれ、一気に読んでしまいました。特に2作目のおにいちゃんのお話が大好きです。一生懸命頑張ったけど報われず、最期の瞬間は惨めであっけない男が好きなので、ゼストおにいちゃん最高でした。密かに更新楽しみにしています。 (4月8日 22時) (レス) @page21 id: b675f659fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あいすくりぃむとちょこれぃと | 作成日時:2024年4月6日 3時