黒塗りの言葉 ito pin ページ1
この街に来てから
もう何度目かわからない言葉を彼に投げ捨てる
嫌悪を意味する言葉
人生で何度も言うことのないであろう言葉
『ですから、大嫌いなんですって』
そう伝えれば目の前の彼は少し項垂れて
そしてまた元気を取り戻した
pin「…よし!今日こそ振り向かせるからな!!」
どうやら一目惚れだったらしい
初めて会ったときに伝えられて
その日から毎日、告白をされている
好意を向けられるのは嫌いじゃないし
昔までは有難いって思ってた
でも、この街に来た理由が
残り少ない命で新しいことをやってみたくて
この街に来たんだ
これからある彼とない私なんて
釣り合う以前の問題だ
だからずっと
ぺいん先輩に嫌われたくて
諦めて欲しくて
嫌いだって伝えてきた
pin「そういえば、なんで俺のことそんなに嫌いなの?」
当たり前のように私の隣に座り世間話をする
嫌いな理由
初めて聞かれた
今まで聞かれることなんてなくて
色んな方法でアピールしてきただけだから
嫌いな理由なんてない
けど作らなくてはいけない
『…軽薄そうな、ところですかね』
また嘘を1つ
彼は軽薄なんかじゃない
1人1人大切にしてて
どんな人にでも寄り添える
凄くまっすぐで
こんなにも真摯な人に
嘘を吐くなんて
私、最低だ
ぐちゃぐちゃになった心を少しでも鎮めたくて
1人になるために先輩から離れた
屋上で風にあたれば
この気が落ち着いてくれる
そんな根拠もない気持ちで屋上に出て、風がよく当たりそうな縁にいく
日が暖かくて、風も気持ちいい日だ
いつも、頭の中で反響するのは
医師から伝えられたもう永くないという言葉
そんな私でも何かできると思って
未来に希望を持って、ロスサントスにきて
それで、今の私はどうなってる
ただ、ただ苦しいだけ
『こんなことになるんだったら、希望なんて持たなきゃよかった』
あのまま病院のベットで
変わらない景色をずっと眺めるだけの人生だったら、こんなに苦しくなることも
本音を塗りつぶした嘘も吐くことがなかった
生きようと思わなければ
出会わなければ
そんな暗い感情が私を塗りつぶしたとき
手が後ろに引かれ、体が傾く
倒れる
かと思えば、誰かに包まれていて
視界の端には見慣れた金色の髪が風によって揺れていた
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作者名:泡沫 | 作成日時:2024年4月18日 8時